FC2ブログ

みよごんの壺 堤真一さんについて、おもむくままに語ります。

るつぼ 17 みよごん的解釈

堤真一さんが
運命に翻弄される農夫
ジョン・プロクターを演じる

「るつぼ」


20161011-2.jpg

初日の感動から早や4日。
僭越ながら、お芝居のあらすじと感想を、
みよごん的解釈として書かせていただきます m(__)m

以下、ネタバレありです (^^;




10月18日、一部加筆・訂正いたしました。






このお芝居で一番理解しやすい人物は、
溝端淳平さん演じる
善意の第三者である「ヘイル牧師」でしょう。
事態が思わぬ方向に暴走し出したことに気づきながら、
その勢いを止められず、
万策尽きて絶望感に打ちひしがれる姿は、
観客の感情を一身に受け止めて、
とても感動的でした。

このように、
観客をストーリーに乗せる人物がヘイル牧師だとするならば、
お芝居の本質を演じるのはもちろん
堤真一さん演じる主役の
農夫 ジョン・プロクター。

自分の内面と向き合うこととは、
本当の自分とは、
人間とはなんであるか、と
観客に問いかけてくれました。



登場人物の中で、
プロクターが衣服を替えていることが気になったので、
他の登場人物も含めて、
衣服を軸に書き進めていきたいと思います。
厳密にいえばプロクターは替えているのではなく、
最初はコートを着ていて、
次にそれを脱いで、シャツ、ベスト、ズボン、
最後はベストもブーツもなくなり、
肌が露わになるくらい衣服がボロボロになるのですが。






まずプロクターは、
前夜の騒動で失神した少女の部屋に
農土を連想させる黄土色のレザーコートを着て登場します。


精悍な顔を乗せた首から下をすべて覆いつくすロングコート。
肩などにかなり凝ったデザインがされています。
プロクターの言動もかなり攻撃的で、
体力気力ともに充実した男の自信を漲らせています。

黒木華さん演じる悪魔的な美少女アビゲイルが
夢中になるのも頷けます。
アビゲイルは情熱を表現する赤いドレスを身にまとい、
熱い視線でプロクターを射抜きます。
彼女の心に燃え盛る彼への想いは、
白いターバンをほどいた長い黒髪から滴れ落ち、
胸元をきつく結んでいた紐をほどきます。
プロクターは彼女を拒絶するものの、
かつて二人の間には情熱が存在したことを確信させる、
とても官能的なシーンです。

プロクターがアビゲイルを拒絶し、
言い争いが始まると失神していた少女が叫び声をあげ、
部屋に人々が入ってきます。

この少女失神騒動について、
セイラムの人々は様々な憶測を巡らせますが、
直観を信じるプロクターは話の成り行きを見届けずに村へ帰ります。
このあと、
アビゲイルが悪魔に便乗して恐ろしい罠を仕掛けてくることを知らないまま…




その数日後、舞台はプロクターの自宅です。
仕事を終えた彼は部屋に入るとコートを壁に掛けます。
松雪泰子さん演じる妻のエリザベスは、
首元まで紐がしっかりと結ばれた灰色のドレスを着ています。
彼女が敬虔で厳格な清教徒であることが見て取れます。

殺風景な部屋。
どこか嚙み合わない二人の会話。
夫の口づけを拒否する妻。

ここには、
自信に満ちたプロクターの姿はありません。
愚行を暴かれ、罪悪感にさいなまれる哀れな男の姿がありました。

ここでふと、あのコートは、
アビゲイルの情熱から身を守るばかりでなく、
己の愚行を隠し、自信たっぷりに振舞うための鎧、
そういうプロクターを象徴するものだったのだと思いました。



そんな哀れな男のもとを
さまざまな出来事が襲い掛かります。

アビゲイルはエリザベスに巧妙な罠を仕掛け、
夫婦はまんまと嵌ってしまいます。

捕らえられていく妻を目の前に何もできなかったプロクターは、
アビゲイルの嘘を暴くべく、
アビゲイルの友人であり、プロクター家の小間使いの
メアリー・ウォレン(岸井ゆきのさん)を証言者として、
教会と裁判官に立ち向かう決意をします。


ここで1部の幕が下ります。

感情を爆発させるプロクターの姿に、
心が激しく揺さぶられました。






さて、第2部。

戯曲にはないシーンから始まります。


舞台中央のテーブルに立つプロクターと
その両脇の床に立つエリザベスとアビゲイル。
天から射す光はプロクターに降り注ぎます。

ここでは
二人の女性の間で天の裁きを受ける男、という図かと思いましたが、
後で、別の暗示を感じました。
それはまたのちほど…


プロクターはエリザベスの潔白を証明するために
小間使いのメアリー・ウォレンを連れて法廷に乗り込みます。
彼は怖気づくメアリーを勇気づけながら
アビゲイルの噓とたくらみを暴こうとします。

しかし、
無理なことを要求してくる裁判官たちと
全く怯まないアビゲイルに業を煮やしたプロクターは、
突然アビゲイルに襲い掛かります。
長い黒髪をつかんで引きずり倒し、
これでもか、というほどの汚い言葉で罵倒します。
そして、苦悩と自己嫌悪と羞恥心と戦いながら、
しぼりだすような声で、己の愚かな罪をすべて告白しました。

この場面を観ながら、
プロクターが引きずり倒したのはアビゲイルだけれども、
それは同時に、
己の中にある醜い物を白日の下に晒す覚悟、
言い方を替えれば、
アビゲイルはプロクターの醜い部分の分身なのだと感じました。
だからこそ、
この上なく乱暴に、口汚く罵ったのだと・・・


驚いた裁判官は、一計を案じ、
プロクターが絶対嘘をつかないと言う妻・エリザベスを呼んで、
彼の告白が真実であるかどうか確かめることにしました。

しかし、
彼女は夫を慮るばかりに、
真実を告白しませんでした。

これですべては終わり…

アビゲイルは少女たちを扇動し集団ヒステリーを起こします。
メアリーは身の危険を感じ、
良心を貫くことができずアビゲイルの側に戻ってしまいます。

混乱の中、
プロクターはメアリ・ウォレンに悪魔を取りつかせた罪で投獄されます。

アビゲイルは
プロクターを求め続ける姿のまま舞台から姿を消します。
そして二度と舞台に現れることはありませんでした。



次の場面はとうとう、
プロクターが処刑される朝の牢獄です。

すでに12人を絞首刑に処された町は、
いつ自分に罪がかけられるかわからない恐怖で
反乱がおこりかねない状況でした。
裁判の信憑性を保つために、
誰かに罪を告白させる必要がありました。
裁判官たちは民衆を納得させるにふさわしい人物として、
プロクターを選びました。
そして、
子を宿して刑を延期されているエリザベスに
彼の説得をさせようと思いつきました。


現れたプロクターは
汚れた体が露わになるほどにボロボロに破けたシャツとズボン。
その足にブーツはありません。
一方、エリザベスも汚れた体に
捕らわれた日の灰色のドレスを着ていました。
少し膨らんだおなかのために上着の紐を少し緩めて。

久しぶりに会ったふたりは
どちらともなく相手に触れ、
お互いの身を案じます。

知り合いの安否の話になり…
ついに
プロクターは生きていたいという気持ちを告げます。
そして、
そういう自分を許してほしいと。

エリザベスは答えます
「あなたの思うように」


プロクターは、
生きたいという本能と
人間としての尊厳と、
自己嫌悪と罪悪感とが鬩ぎ合う、
壮絶な葛藤のなか、
いったんは、なりふり構わず生きていく道を選びながら、
最後の最後の土壇場で、
「魂は渡した。名前は残してくれ」
と叫んで死を選びます。






魂とは何なんだろう。
名前とは何なんだろう。
プロクターにとってのエリザベスとは?


プロクターは
自分のしてきたこと全て(魂)を認めて受け入れたうえで、
やっと、
本当の自分に辿り着いた、
自尊心を取り戻した、ということなのでしょうか。


では、エリザベスは?
と考えたとき、思い出したのは
第2部が始まった時の
天からの光を浴びるプロクターと
彼を挟むエリザベスとアビゲイルの姿でした。



アビゲイルはプロクターの醜い部分の分身(象徴)だとしたら、
エリザベスは彼の良心の分身(象徴)。

罪悪感と自己嫌悪に苛まれたプロクターは、
自分の中に良心を見出せず、
エリザベスにおもねて生きてきたのでしょう。

プロクターは最後の最後で、
罪悪感と自己嫌悪を乗り越え、
エリザベスから自立し、
自尊心を取り戻した。

そうなって初めて交わせる、妻との熱い口づけ・・・




みよごんには、
プロクターがここに辿り着くまでの行程と
彼の衣服がどんどん削ぎ落とされていく様子が重なって見えました。

ヘイル牧師から見たら、不条理な悲劇であっても、
プロクターにとっては奇跡だったのかもしれませんね。

第2部の始めのシーンの、あのプロクターに射す光は、
絶望的な物語に射す、一筋の救いの暗示だったのでしょうか。






今でも目を閉じると、
プロクターの葛藤に苦しむ姿と、
心の奥底から湧き上がってきたようなあの声が甦ります。








最後まで読んでいただき、
どうもありがとうございました m(__)m




関連記事
スポンサーサイト



みよごん

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation.

6 Comments

みよごん says..."椎名さま"
いらっしゃいませ (*^-^*)

椎名さまは大阪でご覧になるんですね。
私の感想はあくまで独善的なので、
お役に立つかどうかわかりませんが、
ともかくご覧になれば、すぐわかると思います ♡
どうぞたっぷり期待なさってください (^^♪

「地図を持たずに」がなくなっちゃって、
さみしいですよね。
復活嘆願書を書きたいですね。
2016.10.14 13:34 | URL | #g3xRiuA6 [edit]
みよごん says..."ガオさま"
いらっしゃいませ!
初日はお会いできてうれしかったです (*^-^*)
こちらこそありがとうございました。

ホント、人間って恐いですよね。
人が人を裁くことの恐ろしさや難しさも考えさせられました。

ともあれ、
いい初日で本当に良かったですね。
>このまま突っ走ってほしいです。
同感です (^^♪
次回の観劇が楽しみです ♡
2016.10.14 13:25 | URL | #g3xRiuA6 [edit]
椎名 says..."ありがとう"
感想ありがとうございます。
私は大阪に観に行くのですが、一度しか観れないので難解だと理解出来るか?不安だったんですが
みよごんさんの文章で絵も浮かび予習出来そして、なにより凄く楽しみになりました。
堤さんの熱演楽しみに行ってきます♪

そしてこの場を借りて
ガオさんだぁブログ見てました。
終わって寂しいガオさんの感想も聞きたかったな。
2016.10.13 22:43 | URL | #- [edit]
ガオ says..."いい初日でしたね☆"
みよごんさん、こんばんは。
こちらでは久しぶりです(*^_^*)
初日の日はありがとうございました。
観劇の後、色々お話出来て楽しかったです♪

そして、そして
なるほど、衣装とプロクターの心理が
関係しているというの確かにそうかもしれませんね。
最後の彼の決断には落涙すると同時に
どこかやりきれないものもあり
人間の恐ろしさを心底感じたりもしました。
いい初日でした。このまま突っ走ってほしいです。

それでは、お邪魔しましたm(__)m
2016.10.13 22:14 | URL | #tHX44QXM [edit]
みよごん says..."キリミクさま"
いらっしゃいませ (*^-^*)

こんな文章でも、雰囲気を感じていただけてうれしいです。
>登場人物すべての視点で見たくなりました。
そうなんですよ。
人それぞれいろいろな事情を背負って生きているので、
さまざまな感情と思惑が絡み合うのですよね。

ここには書きませんでしたが、
黒田育代さんの振り付けもとても美しく、
脇を固める俳優さんもよかったです。
カメラが入っていないことが残念です。

読んでくださって、ありがとうございました m(__)m
2016.10.13 08:22 | URL | #g3xRiuA6 [edit]
キリミク says..."NoTitle"
みよごんさん、こんにちは
咀嚼するように読ませていただきました。
不条理といってしまえば簡単なのかもしれませんが、本当に深い舞台ですね。
私の解釈のスピードでは、何度も何度も舞台を見て、登場人物すべての視点で見たくなりました。
観劇が叶わなかったですが、みよごんさんの文章から伝わってくる狂気、熱気、哀愁で酔いそうです。
書いていただいて、ありがとうございました。
2016.10.12 16:22 | URL | #jhC0J7jE [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://miyogon345.blog.fc2.com/tb.php/594-98dbe6f4